季節のニュース
免疫力が低下すると、感染症や様々な病気にかかりやすくなったり、病気や怪我が治りにくくなることがあります。
バランスの取れた食事、十分な睡眠、適度な運動など、日頃から健康的な生活習慣を身に付けましょう。
胃潰瘍とヘリコバクター・ピロリ菌(H.pylori)
胃潰瘍の原因は胃酸やストレスだけじゃない?
胃潰瘍は古くから胃酸やストレスが主因と考えられてきました。
しかし、近年の研究で胃潰瘍発症にはヘリコバクター・ピロリ菌(H.pylori)という細菌の胃への感染が深くかかわっていることが明らかになりました。
ただし、H.pyloriの感染が必ず胃潰瘍を引き起こすわけではなく、個人の抵抗力、食生活、喫煙、ストレス等も関係しています。
ヘリコバクター・ピロリ菌(H.pylori)とは?
H.pyloriはその強力なウレアーゼ(尿素分解酵素)活性で高濃度のアンモニアを産生して胃酸を中和することによって強酸の胃内でも生存できます。
また、アンモニアなどの産生物質は胃粘膜を強く傷害して胃潰瘍などの疾患を引き起こします。
H.pyloriは小児期に感染して除菌しなければ生涯感染は持続します。日本人成人の約7割がH.pyloriに感染していると言われています。また、胃十二指腸潰瘍の患者さんの95~99%にH.pylori感染が認められます。
H.pylori陽性の胃十二指腸潰瘍の患者さんは潰瘍の治療をしてもH.pyloriの除菌治療をしなければ、高い確率で将来再発する危険があります。
また、近年の研究ではH.pyloriは胃十二指腸疾患のみならず虚血性心疾患、貧血、皮膚疾患、突発性血小板減少性紫斑病などの消化管以外の疾患とのかかわりが示唆されています。
現在H.pyloriの除菌治療の保険適応は、胃のリンパ腫、突発性血小板減少性紫斑病、早期胃癌の内視鏡術後胃、ピロリ菌との関連が強く示唆されている一部の慢性胃炎(萎縮性胃炎)までとなっています。
ヘリコバクター・ピロリ菌(H.pylori)感染の検査法
H.pylori感染を診断するには内視鏡を用いた方法、血液検査によるもの、呼気中の微量尿素を測定する方法など様々ですが、それぞれに利点欠点があります。
★ピロリ菌の各検査法の利点・欠点
1.内視鏡による組織・検鏡検査
内視鏡で胃の粘膜を一部採取して、ピロリ菌の有無を顕微鏡で観察する方法です。
[利点]
- 精度が高い
- 同時に胃の病気(胃炎、胃潰瘍、癌など)のチェックを行える
- 保険適応あり
[欠点]
- 内視鏡検査での身体的、経済的な負担あり
2.血液検査(抗体検査)
採血した血液からピロリ菌へ感染した際につくられる抗体の量を測定する方法です。
主に人間ドックなどで行われている検査です。
[利点]
- 身体的な負担がほぼなし(採血のみ)
[欠点]
- 血液中の抗体の量から間接的に調べるので、精度にやや難あり
(近年検査法の改良で精度も上がっているようです) - 検査結果が体の状況に左右される可能性がある(血液の病気を持っているなど)
- 治療をしてピロリ菌を消失しても、血液中の抗体の量は1年程度高いままなので、治療後の効果判定には向かない。
- 保険適応なし(あらかじめ内視鏡検査を行った時のみ、1回だけ保険適応)
3.尿素呼気テスト
検査薬を飲んでもらい、呼気中から胃内のピロリ菌の反応を測定する方法です。
[利点]
- 精度が高い(各検査中、最も高い検査法)
- 身体的負担がほぼなし
- 検査時にピロリ菌が活動している状態を測定しているので、ピロリ菌が消えていれば、比較的すみやかに結果に反映できる。治療後の効果判定にも有用
[欠点]
- 保険適応できる場合が限られる(内視鏡検査後やピロリ菌治療後のみ)
以上をふまえて、
当院では初診の患者様では先ず内視鏡検査をおすすめし、検査時にピロリ菌検査(組織検査)を同時に行います。
H.pylori菌に感染していれば治療を行い、そののちに尿素呼気テストで効果判定を行うという流れです。
もし、どうしても内視鏡を受けたくないという方は、自費で抗体検査あるいは尿素呼気テストを受ける事も可能です。
胃痛・ムカツキなどの胃の症状が続く方、過去に胃十二指腸潰瘍を繰り返している方は胃内視鏡検査とともにヘリコバクター・ピロリ菌(H.pylori)の検査を受けることをおすすめします。
痛くない大腸内視鏡検査
日本人では成人の3人に一人は大腸ポリープがあると言われています。
大腸ポリープの一部はポリープの増大と共に癌化することが知られています。
また、日本の大腸癌患者の数は食事の欧米化に伴い近年急速に増加しています。
大腸ポリープや大腸癌は自覚症状に乏しく、かなり進行してから発見される患者さんが増えています。大腸癌が進行し、出血や腹痛を伴う症状が出ている場合は、死亡率が急激に高まります。
このため、現在ほとんどの健康診断で検便による便潜血検査を行い、大腸癌の早期発見に努めています。
大腸癌は早期発見さえ出来れば、100%に近い確率で完治できると言われている病気なのです。
しかし、便潜血検査では大腸ポリープのうち、癌化の危険性があるとされる10mm以上の大きなポリープでさえ半数は見逃されています。
大腸癌でも、進行癌の10%、早期癌の50%もの患者さんが、便潜血検査では見逃されています。
早期の状態では出血していないことが多く、便潜血検査で陰性になってしまう事があります。ですので、大腸癌・大腸ポリープが無いとは完全には言えません。
★大腸ポリープ(良性)
大腸の表面が盛り上がったできものをポリープと言います。自覚症状はほとんどなく、検査で見つかるケースがほとんどです。
大腸ポリープを放置しておくと、大腸癌に悪化してしまう危険性があります。
すべてが大腸癌になるとは限りませんが、定期的に検査する事をおすすめします。
また、大腸癌になりやすい体質の方がいますので、家系に大腸癌になった方がいる場合はぜひ一度大腸内視鏡検査をお受けください。
★大腸癌
大腸ポリープが進行し癌化したものです。検便等の検査では発見しにくく、かなり進行しないと自覚症状はないので、気づいた時には手遅れだったというケースが多くあります。そのせいで死亡率の高い癌(女性の癌死亡率1位)と言われています。
また、近年の食の欧米化により、大腸癌にかかる方が年々増えています。
早期発見さえ出来れば、完治する可能性が高い癌ですので、定期的な大腸内視鏡検査を行いましょう。
大腸ポリープや大腸癌を見つけるためには、大腸内視鏡検査が最も優れています。
小型の高性能カメラで大腸の内部を直接観察するので、小さなポリープでも正確に発見できます。
便潜血検査陽性や便通異常等の症状がある方はもちろん、無症状でも40歳を過ぎたら、1,2年に1回の大腸内視鏡検査を受けることが大腸癌を防ぐ最も有効な手段です。
大腸内視鏡検査を無痛で安全に行うためには、熟練した専門医の技術が不可欠です。
大腸内視鏡検査を受けるにあたっては、経験豊富な内視鏡専門医への受診をおすすめします。
当院の大腸内視鏡検査は痛くない内視鏡をモットーにしていますので、どなたでも安心してお受けいただけると思います。
苦しくない胃内視鏡検査
当院では、苦しくない内視鏡をモットーにしております。
細径の内視鏡を使用して、苦痛や緊張を取る目的に安定剤の注射をして検査を行うことによって、苦しくない胃内視鏡検査を実践しています。
ですので、どなたでも安心して検査を受けていただけると思います。
特に、以前に内視鏡検査を受けて苦しかった経験があり、検査を受けることに抵抗のある方などもぜひ一度ご相談ください。
★慢性胃炎
慢性胃炎の一種である萎縮性胃炎は、胃壁の防護作用を行う粘液の分泌が低下している状態で、胃痛、もたれ、膨満感などの症状を引き起こします。またピロリ菌の関与が指摘され、胃癌の発生の一因とも考えられており、内視鏡でピロリ菌が確認されれば、積極的に除菌治療を行う事をおすすめします。
★胃潰瘍
胃潰瘍は、有効な治療薬の開発や主因であるピロリ菌の除菌治療の導入によって治療成績は進歩しました。しかし、急性の進行の早い胃潰瘍による消化管出血や胃穿孔といった重度の症状に至る患者さんの数は減っていません。胃の調子が変だなと感じた時には早めに内視鏡検査を受けましょう。
また、最近ヘリコバクターピロリ菌による胃内の感染が胃潰瘍や胃がんの要因の一つであることが分かってきました。当院では胃内視鏡検査と同時にヘリコバクターピロリ菌の有無を調べることができます。
胃の調子が慢性的にすぐれない方、過去に胃潰瘍や十二指腸潰瘍を患ったことのある方は、ヘリコバクターピロリ菌の感染の疑いがありますので、医師にご相談ください。